秋の魚あはれ/yo-yo
 
木の葉が
風に散っていく
表になり裏になり
葉脈の流れをとめて
秋の波紋がひろがっていく

セコと呼ばれる河童が
山へと帰っていく季節だった
雨が降ったあとの小さな水たまりが
河童の目ん玉でいっぱいだった
その道を
山から川へと帰っていく人もいた
その人は
一枚の葉っぱが
魚に変身するのを見たという
美しい魚だった

エノキの葉っぱが魚になったので
エノハと名付けられた

水が激しく落ちこむ瀬に
大きく竿を振って瀬虫を放りこむ
手元にぐぐっとくる動きを引き上げる
しびれたように痙攣しながら
あはれ銀色の魚体が
宙を泳いだ

一瞬の秋が落ちる
そのとき
釣り人の手に残されたのは
色あざやかな
一枚の葉っぱだった






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