腐った林檎は誰も拾わない/這 いずる
口約束で
作り上げられた 甘さは
おたがいに溺れるような
沈んでいくような
そんなすばらしい沼
底なしの許容だけがあり
腐り落ちた水菓子は叱られることもなく
じわり果汁を滴らせている
どこにも行けない水たまり
芳しい香りをさせている
痛んでも優雅なあなたは
ロータスの華を存在に添え
咲き誇る花弁をまとわりつかせていた
あなたの無責任な大丈夫だよに
騙され
痛んだ体で汁を滲ませるばかりの私
何も持ってないから
腐っていくばかりで
これでいいはずもなかったのに
あなたは大丈夫だよと未だに微笑む
それにまた安心し騙され
生きてられないはずの醜さで
生きるしかなくなる
これは罰なのだろうか
腐った体でずぶずぶと沈んでいく
埋まり切った暗闇は静寂で
安穏として抱かれた
戻る 編 削 Point(8)