もう世界の中心で愛をさけんだりなんてしないなんて言わないよぜったい/末下りょう
 

おなか、空いてない?
きみにそう聞かれるとぼくのおなかは減りはじめる
そしてそう聞かれたときから余すことなく満たされていく
朝の光のなか、テーブルに触り、きみのそばに座り
きみに満たされた空腹を満たす準備をする
コーヒーが冷めるのをじっと待つように

キッチンの蛇口に一匹のアシナガバチがとまり水を飲んでいる
きみはそれに気づかずに、進化論を否定するようなアキレス腱をむけて
大きなパンを切っている
倒れた植木鉢の花が、湿った土に被さり
窓枠に溜まる光の階段を見あげていた
昨夜の雷か、子どもの投げた花火か
どちらとも言えない音がまだ耳に眠っている
ぼくはいつのまにか空欄
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