母校/葉leaf
 
母校へと続く道を
十数年ぶりに歩いていると
風景に込められた無量の意味が
過ぎ去った感覚を再び過ぎ去らせて
私の身は引き裂かれ
その間隙を過去の雨だれが舐めていく

緑地公園をさまよう私の流跡
郷愁と郷土愛の合金に似たものが
新幹線の下の道に紡がれていく
夏の陽射しは木の葉に燃え移り
太陽の実が至るところで輝いている
高校生の頃
世界はもっとまばゆく熱かった

母校に辿り着くと
何も変わっていなかった
校舎の見た目というよりも
高校の果たす機能が変わっていない
目に映る高校球児も
大工仕事をしている若い教師も
昔とそっくり同じ顔をしている
何よりも額の部分に同じ含みがある

図書館でもみな夏の装い
本はこの世の冷却材のようで
司書さんに挨拶をし
卒業生として著作を寄贈した
寄贈は母校との師弟関係への一打撃
拒絶から愛へ向かう精神史の証明

私は高校時代に文学を知った
私の著作は高校時代へのはなむけで
夏は毎年鋭利に人生を区切るのだった

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