雨と記憶/
伊藤 大樹
私も水から生まれたひとりだから
孤りはさびしいだろう
七十年前 誰かがこぼした涙が
いま雨となって私の肩にしたたり落ちる
(人は雨でつながっているのだな)
私のなかで蠢く海流がある
あなたのなかにもあるその水源を
探求することが いのちの始まりでした
木洩陽の射す窓に映っている
甘美な疲労と
水面の波紋のように拡がりを見せる記憶が
影をなして
私を潤してくれる
水辺から遠く
私も水から生まれたひとりだから
雨の音はなつかしいだろう
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