粒子(たまし)は天空を飛翔する/南無一
 


天空から降り注ぐ粒子のあられ
α<アルファ>
β<ベーター>
γ<ガンマー>
三重奏の掠れた旋律は
我が肉体を透過したのち
真空の箱に充ちることはない

ブラインドされた虚ろな瞳には
粒子たちの闇雲の飛翔を
追うことはできないように
切り立った断崖に佇む者にさえ
終焉を観ることはできない

去っていこうとする者も
留まる者も
有限の箱を携えている
壮麗に飾られた箱の中身が
たとえ空っぽでも
有機化合物の燃焼の果てに残る
炭酸カルシウムの灰に捧げられる祈りを
虚無だと
誰が言えるのか

爛れた皮鮮の背を掻き毟る伸びた爪は
鮮血のマニキュアで染
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