あの手 この手/るるりら
 
【あの手 この手】

あれは
てあて だったのだろうか
その手に触れた途端
理由の わからない涙が あふれた
どのような ゆえんで  
私がその場に 辿りついたのかは おもいだせない
ただ涙を流したことだけを覚えている
人は なにかを超えると、涙を流す
ことばで表現できるものを 超えて、 私は泣いた

わたしを泣かせたのは手だった
それも作り物の手 
東南アジアの私の知らない国からきた ただの仏像の一部
手首の部分だけの像だった
しらない国の像なんて 見たことがないはずなのに 
わたしは知っていると感じた
説明書きによると「印」と
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