1985年頃は/うめバア
 


受験生は1人
赤い石油ストーブの炊かれる部屋の中
ラジオが夜を流れて
孤独と、孤独をつないでいた。

歌は
歌謡曲と、ニューミュージックと、
洋楽と、演歌とに分けられていた。

かからなかったリクエスト
書かなかった葉書
いつか、いつか
いつかの向こうに
1985年頃があったと思う。

ワンポイントのハイソックスが
きらきら通り過ぎる、夕暮れ
キャラクター商品の
ペンケースや紙袋…
31種類のアイスクリームと
パステルカラーの
はしゃぎ声

ハート型のチョコレートと
短い言葉
雪の日のわたり廊下

みんなよりも少しだけ先に
追い抜きたかった

みんなと一緒に
駆け抜けたかった

そして今はもう
追いつくことはない
1985年頃

ざくざくと、霜柱をふむ
白い息をはきながら、歩いていく
何百もの紺色にうずまった
冬の朝。

1985年頃の、冬の朝

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