「ラフ・テフ」番外編 ゆっこのキリン(プリントアウト用)/オダ カズヒコ
 

真紅のベロアの椅子に腰を掛け
ぼくはタバコを吸っていた

もう窓の外に
キリンなんてみたりはしない

きっとあんまり大きな声で
それも寝言で
ゆっこが彼のことを何度も言うものだから
キリンはどこかへ隠れてしまったらしい

「キリン キリン」って
また彼女がまたうわごとで言う

一晩中 窓を開け放して
おきたい気分だったが
ゆっこが風邪を引くようなことが
あってはいけないと思ってやめた

その代わりぼくは
ホテルの部屋の南側の白い壁に
キリンの絵を描き始めた

それから バスタブや天井にだって
テーブルの上にも 湯のみ茶碗の裏っかわにさえ
腕の力が
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