自分だけの景色/あおたん
 
深緑のスーパーカブをぶるぶると走らせて
夏が充満した空気を切りながらメロディーを探していた

作曲というのは楽器鳴らしながらするタイプの人と
楽器を持たないで頭の中でするタイプの人に分かれるけれど
僕は、どちらかといえば後者だった
僕はバイクを走らせながらメロディーを探すのが好きだ

それはたぶん深い森の黒い影と、白い光とのコントラストの中や
遠くを見渡せる直線の道の先に漂う陽炎に
あるいは駅前の高いビルがすっと伸びている背景に
あると感じるけれど
意外と見つからなくて
虚しさと一緒に走っていた
ファミリーマートでパンとポカリスエット買って休んだ

孤独で虚しくて、ほんのり愛おしいこの時間が
メロディーが見つからなくても好き
住宅街の一角に設けられた丸いベンチに座りながら思っていたら
強い陽ざしから僕を守る大きな木の豊かさと、気持ちが重なっていた瞬間を
何となくだけど感じた

そんな風に精神的なものと、景色とが混ざり合うときに
ちょっとだけ素敵なメロディーを思いついたりするんです
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