金魚売り/
末下りょう
(踏切を 一滴ぬらす 金魚売)
一握りの午後の 、
その発声の凹の底で、手の皺のなかの風を冷ましながら
坂をのぼる男
黒ずんだ肌
蝉の腹のような太もも
糞をふくみ 、
吐きだす金魚
太陽は日陰で狂っている
破れた手ぬぐいで頸を拭き、男は坂をみおろす
桶の水は
生ぬるい
天秤竿を掛けなおすと 、
夏がゆれる
なんてことない
ノラが一匹、隙をうかがっている
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