プリン ア・ラ・モード/卯左飛四
お風呂で髪を洗っていたら
風呂桶の底でぴちゃりと音がして
鯉の白い腹が光った
押入れを開けたら
冬眠し遅れた熊が
せっせと寝床を作っていた
風を入れようと窓を開けたら
二列縦隊のてんとう虫が
続々と部屋に侵入してきた
どうしよう
何かが狂っている
ともかく外に出たくて玄関を開けたら
見知らぬ男が立っていた
「奥さん新聞はいかがですか」
この世は遙か太古の昔から
おんなじことの繰り返し
新しいことなんてこれっぽっちもありゃしない
毎日新しいことが載らないものを新聞とは呼べない
ちったぁ新しいことを書いてから出直してきやがれ
新聞屋は肩と視線を少しだけ斜めに落とし
静かに去っていった
部屋に戻れば
風呂桶からあふれた鯉がタイルを横すべり
狭い押入れで熊が押しくらまんじゅう
壁はてんとう虫でもうびっしり埋まりそう
ひとまず私は
コンビニで買ってきたプリンアラモードを食べて
一息つくことにしよう
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