スイセンのある部屋/
伊藤 大樹
風のそよぐ窓に凭れ 夢見ていた
もうきっと失われることはないだろう
わたしのなかを流れるひとすじの渓流
苔むした時間に坐って ひとりうずくまっていた
わたしの名を呼ぶ獣の声
いまなら聞こえる、見える!
砕けるガラスのような緘黙が
そのとき わたしは
ふと〈ふたり〉という言葉に隠された孤独を嗅いだ
少しだけ雨の匂いの混じったそれを
わたしは いままで愛していたのだと知った
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