湖/
 
感情は結局最後まで  暴れて逃げだしたりはせず
体の内でただ  小さく静かに揺れていた
おかげで私は  私を保ったまま
望んだとおりの形で  消えていくことができる
一度も辿られることのなかった  記憶の雲々にまぎれて
あの黒い塊は無事  人知れず霞んでいく
私はあの塊の  大きさを知らない
もしかしたら本当は  砂粒ほどのものかもしれない
それでも私は今  晴れ晴れとして水辺に立っている
得体の知れない恐れの中を  もがいてあがいて
今この時のため  つむいできた命だった
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