子宮ヶ原発、老人ホーム行/成澤 和樹
 
畳の上で死にたいとは思わない
むしろ畳の下敷きになって
老人ホームにも行かないで
遠く遠のく意識の果てで
頑固ジジイと罵られ
諦めながら死んでいく
そんなカッコつけた
馬鹿げた死に方
してみたいもんだ

経験したことがないから
死ぬのが怖いんだ
経験したことがないから
死を見てもどこか抜けてるんだ

一番大切な人が死んで
初めて死がリアルなもんに思えるんだ
初めて生が尊いもんだと思えるんだ
そこまでしないと分からないんだ

子宮ヶ原からやってきて
老人ホーム行きを拒んで外れていく
レールを無視した
そんな馬鹿だから
ただの酔っ払いだから
犬死したいなんて
リアルなもんを知らないまま
そうやって死んでいく

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