ディプロマシィを超えて/水素
あなた方の乗った公文書は到達する
糸を紡いで帆を張った
弱々しいそれは影を投げ
私達に覆い被さる
すみれ色の手紙には朱インクはなく
垂れるその微妙な一滴が
人々を掬い上げる
細やかな粒子に乗りそびれながらも
うねりには飲み込まれ
見上げた天井には紺青が
絵か、それとも写真か
穿つとも無く
切るとも無く
ただ剥げた色の塊を拭って
落ちる絵の具の音が
微かに満ちる
静かに叩く
床の組織は湿気を吸収し、膨張
見えない水の流れが少しだけ行き渡り
積もる埃の複雑さえ塊に変えてしまう
聴き入るのは乾いた空気だけ
それだけで既に事足りていた
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