私小説/がらんどう
 
それはお終いだ、何がお終いなのかは分からないが俺はぼんやりとそんなことを思った。
シーツの下に紛れこんでいたリモコンを探し当てテレビをつけると、天気予報は昨日より最高気温が二度低いことを伝えていた。その予報の通りに、数えることも容易なほどのまばらさで綿雪がゆっくり時間をかけて舞い降りていた。どうやら風は強くないようであった。車道には出勤の車もまだ少なかった。それでも、もう家を出なければならぬ学生たちが歩道の上を通り過ぎる。
自転車に乗った制服姿の少女が、葉を落とした街路樹の脇を走り去っていく。彼女の脚は冬の空気のような色をしていた。こんなにも寒い朝にも膝上10センチのミニスカートとは恐れ入る。
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