私小説/がらんどう
 

「君が何を食べているか言いたまえ。君がどんな人間か当てて見せよう」
当然ながら引用だ。それも手垢どころか足の垢さえもこびりついているほどに飽き飽きした。足の垢がこびりついているということは、それは当然ながら裸足で踏まれたということだ。裸足でなければ当然ピンヒールの跡がくっきりと刻まれていたことだろう。当然俺自身はピンヒールなんて履かないし、俺の背中にもピンヒールの跡は刻まれていないのだが。そう、俺は土足で踏まれまくっている。

ブラインドが下ろされたままのキッチンで俺はいつものように卵を食べる。両面を焼いたフライドエッグ。当然ながらカリカリのベーコンを添えて。ベーコンの油があれば卵に調味
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