かつてわたしが光だったとき/伊藤 大樹
淋しさをポケットいっぱい詰め込んで
ひとりきりの夜を歩こう
いつかわたしも永遠になれるだろうか
かつてわたしが 光の一部であったように
わたしは沈黙のほうにある
とすると
沈黙は詩のほうにある
からだのなかで眠っている糸をそっとほどくような
ささいなやさしさ
ことばはゼロに戻ることを夢見ている
わたしは真水になろうとして
沈黙にそっと寄り添って耳をすます
わたしの胸が匂いに満ちたあとで
川のせせらぎのような沈黙を聴く
なにものにも寄りかからずに
佇んでいるのはむずかしい
それは
誕まれることを知らされたわたしが
わたしの生を生きることを選択したときからだ
教科書には書かれていない歴史を読む
わたしだけが読むことのできる暗号で
白紙の頁に わたしだけの新しい歴史を記す
そっと淋しくなったら
今日のことを思い出して
また夜を踏みしめよう
そして
会ったこともない人に何度も恋をしよう
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