ボタン/イシダユーリ
汚れていると
感じる
内側へ
シーツに
額をこすりつけて
濡らす
強い物語がほしい
とわたしはいつも思っている
あなたには
まだ物語がないので
わたしは必死に
あなたの輪郭をなぞる
強い物語がほしい
と骨を叩いていると
名前がこぼれてきて
しらない名前だ
わたしの血につながらない
無地の名前
わたしの血の捩れは
みどりいろだと
言うと
あなたは風を見た
いいえ
それはゆらされるタオルです
ばらばらになってしまっている
わたしの
血も
骨も
文字も
あなたは
かたまりで
輪郭もないのに
まとまっていて
かわいそう
ばら
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