電車/藤原絵理子
閉じ込められていた扉が開いて 一斉に流れ出す
群集に紛れる 安心感に包まれて
たくさんの孤独は 水族館の鰯になって
同じ水槽の中を 泳ぎ続ける 死ぬときまで
独り暗闇に潜んだ金魚の話を 手紙に書いた
群れからはぐれることを恐れて
怯えるべきことを間違えて みんないなくなった
それは ひとつの幸福だったのかもしれない と
場違いな蟻は 夜更けの駅に
点字ブロックに立ち止まって 触角を動かし
酔っ払いの千鳥足を縫って 巣穴を探している
同じ物を見ても 住む世界が違っている 違和感が
お天気の話とつまらない冗談で その場をごまかし
安らかな居場所へ 孤独の宇宙へ閉じていく
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