僕のなかの思想が燃える/伊藤 大樹
繰り返し繰り返されて新たな夏がめくられる
生まれ生まれた生きとし生けるものの胎盤が廻転する
歴史は繰り返されて過去に逆戻り
僕のなかの石が重い!
君のなかの風が熱い!
取りこぼした数々の涙 70年前にこぼれた涙が
いま雨となって地上に降りそそいでいる
蓄音機に入念に録音された雨の音だ
洗濯物は永遠に乾かない
日々の地図がメルカトル図法なら僕はとっくに死んだだろう
垂直に僕をそびやかすものがある
風の音を聞け 僕の耳よ
触れられない信号機の青色発光ダイオードと
レイリー散乱の空とが美しく糾合する
電車の窓際に間違い探しのように
昨日の景色とは若干違っ
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