動かない家電のスケッチ/中川達矢
 
今は動かない家電が動いていた頃、きみは子どもだった
今は子どもじゃないきみが子どもだった頃、きみは子どもだった
いらなくなったものは捨てたはずだけど
引き出しにとっておいたおもちゃは今でも必要なのだろうか
からだに付着していた血潮は拭き取ったはずでもその中で新たに生成される

生まれたばかりの子どもの将来を考えているきみの横で
ぼくは死ぬ間際の老人の将来を考えている
そう、今は動かなくなった家電の行き場を考えている
他人様の動かなくなった家電
ぼくはごみ処理場で働いているわけではないのに

「はい、そうですねえ、はい、はい、はい、あっ、いやいや、そうではなくてですねえ」

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