線路の左側/かんな
 



小鳥がついばんだ林檎だけ
落ちずに残ったとき
決してこの世は綺麗なものだけで
満たされてはいない
線路の左側を歩いていくと
虹に辿り着くと幼い頃叔父が言った
母について記すときの約束は
ちいさな子供に戻ることで
それは何も知らないことだった
たった一度の出会いを
死とともに受け止めるために
きっと涙は必要ない




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