雨の日の情景/藤原絵理子
今日も雨 灰色に染まった湿気に
沈んでいく ヒザを抱えた狭い宇宙が
傘を広げて 縮んでいく 心地よい闇に向かって
落ちていく 余計な雑音の聞こえない場所へ
窓の外 紫陽花の下に 捨てられた
仔猫が鳴いている 襤褸雑巾になって
鴉は 光回線ケーブルにとまって
黒々と濡れて 翼を整えて身構えている
雨降りを言い訳にして 約束を破った
代わりに手に入れた時間で 儚いものを集める
この世界から去るまでの かけがえのない暇つぶし
紫陽花は雨を含んで うなだれる
はたいてあげようと 触れた瞬間
首根っこからぽきんと折れた 鴉の羽ばたく音
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