君の不在/じぇいぞろ
 
もういない君のことばかり考える

借りたばかりのアパートの窓辺に座り
煙草を吸っていた君の横顔の向こうに
自死した夫への邂逅があっとととか

台所用品を百均で最低限揃えて
最初につくった晩御飯のこととか
ベッドがなくて寝袋で寝たこととか

ホークスの応援歌を覚えて
ボクが運転係で君がビールを4杯飲むこととか
帰りに長浜ラーメンを必ず食べたこととか

ボクが選んだスキーウェアがダサかったのに
キミは喜んでそれを着て、ニセコシェラトンに
泊まったこととか

別府の山の上にある青いプールみたいな温泉に
最後に混浴で入って夕焼けを見ながら泳いだこととか

ハードディスクの1TBあった君の
jpgファイルを消したあの晩
涙がとめどなく流れたこと

何故だか忘れなきゃと思うほど
jpgがaviになって
匂いや温度や空の色まで蘇る

君が持っていたボクの記憶は
白い灰になって
煙突から風に流されていったのに

脆い錯覚をセメントで固めている
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