Flower/感謝/
 
いつものように見上げる向かいの家に植えられた大木

いつかあんな風に地面に真っ直ぐ立って 空に向かって目一杯枝を広げることができたならって

まだ薄ら白い双葉を目一杯広げて思ってた

でも茎は太くならず

芽は下を向いて

ついには地面に倒れこんだ

地面に這いつくばりながらも

伸びていく芽はすがるように
フェンスに絡まって

十代の少年のように

向こう側に居場所を叫んだ
醜い生き方だと知りつつも

近くにいる者に蔓を伸ばして登ってく

やがて一つの洋館を丸々飲み込んで

窓に差す光を遮きった

その横を不気味そうに通り過ぎる通行人達
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