12秒間のニューヨーク/大覚アキラ
おれは今朝、
22口径のリボルバーを携えて
川沿いの安アパートを出て
車検切れ間近のポンティアックで
43号線を西に向かって
安物のカーステレオで
大音量のジョン・ゾーンをかけて
掌に滲む汗をジーンズで拭って
ぬるい缶コーヒーを飲んで
黄色信号を9つ突っ切って
で、
おまえの家に
いま着いたところだ。
コーヒー色のマンションの
おまえの部屋のドアのチャイムを押しながら
「おれはまるで、虎のようだ」と思った。
ドアが開くまでの12秒間。
(こんなところでいまからおれはいったいなにをしでかそうとしているのだ)
本当なら
いまごろおれは
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)