紫電改/じぇいぞろ
 
戦争のない平和な時代らしい
確かに平和な世界には戦争はない

待合室のテレビがNHKであることに
神経質に抗議している男がいて、
受付の年配の女性がやんわりと聞いていた

祖父は紫電改の搭乗員として
本土防衛の任務についた
B29の飛行高度は高く機体が軋んだが
二機撃墜したらしい

紫電改には高度計、水温計、燃料計、
方位計くらいで、操縦は勘だ

平和な時代に自分は仕事を生産する
任務についた
コンプライアンスだの事業の達成率だのISOだの
生産性のない業務だ

ボクらには膨大な誤記、脱漏だらけの
PDFマニュアルだけで、運用は勘だ

目が覚めたら待合室のテレビは
民放になっていた
苦情を言っていた男は
まだ何かぶつぶつ言っていた


戻る   Point(1)