3度目の/亜樹
ジョージ、君がいなくなって、今年でもう三度目の夏が訪れようとしています。
ピンタゾウザメがいなくなったことで起きる弊害は今のところ
私の生活に訪れてはいません
アインシュタインや夏目漱石のように
百年生きた君の体は、
丁寧に丁寧に腑分けされ
いつかの懐かしい理科室の匂い
いかにも薬品らしい液体に中に沈められ
長く長く保存され
それは人々の暮らしに役立つと言いますが、
多分私の生活に
その恩恵が訪れることはないでしょう。
ジョージ、君は、その人生のほとんどを見世物として過ごしました。
餓えることなく、生命の危機を感じることなく、60年の
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