ひと夏/アンテ
偶然だと信じて疑わない
まぬけな横顔
寝息をたてるあなたの頬を
指でなでる
地の底まで貶めるために
ひと夏のあいだ張っていた罠に
まんまとかかって
バカ丸出しで
イビキをかいて
泣いてひざまずかせるはずだったのに
安っぽいエアコンの風が冷たい
蛍光灯がちりちり音をたてている
もう潮時だ
耳の奥でなにかが鳴っている
やけにはっきりした寝言も
人懐っこい目じりも
なんでこんなに同じなのだろう
わたしだけのものだって
勝手に思い込んで
背中にくっついて丸くなる
ひたすら眠っていたい
朝目が覚めた時
いなくなっているのが
今でも得意なの
あの
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