海へ/藤原絵理子
半袖に変わった セーラー服の白がまぶしい
目を細めて見上げた空に 風は雲を巻いて
かすかな潮の香りが 広がる記憶に
連れていく 銀色の波が光る場所へ
裸足になって 寄せる波から逃げた
砂に埋もれた 流木の影は長く
とりとめのないおしゃべりに 笑っていた
きみが集めてくれた桜貝が 壊れやすくて
灯台の光の向こうには
何も見えない 暗い海だけが
そんなことを 気にもかけないで
やわらかい心の奥を 見つめ合っていた
きみといた夏は 鮮やかに色褪せて
あたしは まだ その幻を追いかけている
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