黒い袋/島中 充
 
さかなの匂うまちから 黒い袋を抱えて
私は電車の座席にすわっている
黒い袋をおさえて
乗客の視線が私の膝の上に集まっている
おさえても おさえても 黒いゴミ袋が飛び跳ねるのだ
まだ生きている

私はきのう見た夢の事を思い出していた

海岸に陽に照らされて乾物のように干からびた大きな魚
それはおれの弟だと父は言った
蠅の黒くたかった魚 
ニューギニアで戦死した弟だと言った
流木を集め 浜辺で燃やした
湿った流木は小さくしか燃えなかった ちょろちょろと燃えて
腹から
頭から
眼球から
出てくる 出てくる 
うじむし
そして父は指さしながら 口を開いた 
そのう
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