砂丘にて/じぇいぞろ
 
」と言う。
「最大楽差90mのすり鉢があるのよ。そこへ落ちたら、ありじごくの餌食よ。」
「そんなでかいウスバカゲロウの幼虫はいない。」

台風当日、装備を付けて丘を目指した。
「ねえ、普通にハンググライダーやったほうが良くない?」
「低気圧のぞわぞわする気分が高揚するのよ。」
彼女の手首を波とたんにロープでくくり付ける。
すっと立ち上がって飛ぶ。
結構とばされた。
手をふると丸印を作って返す。
ボクはなんだか飛べなかった。
「つまんないひと。」
「つまんなくはない。フツー。」

帰宅してインターネットで調べたら海難者の白骨が4体見つかっただけらしい。そんなはずはない、とボクは思った。あの台風の夜に感じた足を引っ張られる感覚について。
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