異種交配ホテル/じぇいぞろ
 
ごご11時の
プライベートビーチに
椅子がひとつだけあり、
ボクはそこに座っていた。

鰯のアタマをしたボーイが来て、
「申し訳ありませんが
そちらは予約席でして」と言う。

「別に構わないじゃないか」というと、
「そちらの席は満潮になると
海の底に沈んでしまうのです。
しかも、
今夜は予約が入っておりまして。」

うにのアタマをしたウェイトレスが
注文したフローズンダイキリを運んできた。

「わかったよ」とグラスを手に立ち上がると、
周囲には何もなくなっていた。

瀟洒なリゾートホテルも、
鰯のボーイもうにのウェイトレスも。
椅子とボクだけを残して。

予約客は現れなかった。

完全なる暗闇。

ボクは椅子に座って、
ダイキリを飲みながら、
暗い海をぢっと睨んだ。

満潮の時間が近づいていた。


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