夢に沈む前に/佐藤守
 

私はほうぼうを探し歩き
ようやく見つけた飲み物を抱えて戻ると
貴女はどこにもいなかった
どこにも

ベンチに腰を掛け
私もずっと待っていた
夜の闇の中
貴女もずっとこうして
祈っていてくれたなら

***

貴女は今日も
雑踏の中に身を投じ
疲れ果てて眠りにつく
私のことなど微塵も考えることなく

けれど私は貴女に伝えなければならない
貴女が私のもとに帰ってこないことを
私はとてもよく知っていることを
ねぇ、そうして私は
さっき見た夢の中で
貴女の名前を一度だって思い出すことが出来なかったよ

さよなら
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