眠れない夜/ときたまこ
 
人を好きになると世界の色が違うように見えるらしい。
そんな嘘みたいな話を信じては息をする毎日を繰り返して繰り返している。
泣いて笑って落ち込んでは救われて、
さっきの彼は今日の彼で塗りつぶしては忘れていくことに疑いもない。

この世界が一つしかないとしても、わたしの目にはたくさんの色が溢れている。
白と黒だけを愛すようなかっこ悪い形を残さないように、
いやな記憶は消せなくてもそれでいいのだと思うことで自分を救う。

彼に出来ることは私を愛すことだけで、
私を救うのはいつだって私自身だ。

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