初夏/大島武士
 
彩に重ね合わせながら
リズムも取らずに聴いていると

「人生にいつか終りがあることを
あまり実感していなかった時でも
退屈な時は退屈だった」
と思いだし
「その全く逆もあり得るのかな」と
少し考えてはほくそ笑み
自分の目尻にできた皺なんかを
鏡も見ないで大切に思い
駅についてはホームへと向かう

「何であれ 退屈するのは嫌いなんだ」と
電車に乗り込み いつもの街へと
はるか彼方へと向かう感覚で
鞄から取り出した 本のページを開いた

「何一つ失いたくはない」と
出来ないことが分かっていても
今までよりは少し慎重に 
でも
相変わらず 多くを求めて
遠くの光へと

電車に揺られてまどろむように
それでいながら 電車の速度で
向かいたい

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