初夏/大島武士
あまりに多くを求めすぎて
多くのものを失ってきた気がするけれど
多くを求めないと やはり
失うものがある気がする
少し肌に痛い初夏の日差しは
駅までの道はあと少しなのに
ずっと彼方に広がっているような
そんな感覚を覚えさせるから
少年の日はいつもそんな感じだった
求めるものが定かではなく
ただ遠くに感じる光にだけ
胸の奥から手を伸ばす
それが嬉しくて楽しくて
なんて豊かな時間だったのだろう
夏服にはポケットが少ないから
歩きながら音楽を聴くのは
何か少し かさばる感じだけれど
少年の日にはよくわからなかった
二十分以上あるピアノの曲を
初夏の色彩に
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