なびく丘で/かんな
 



にれは祠に奉られていた
遠い昔の話だけれど
少なくとも言い伝えられるだけの
価値があったのだとはるは言った

ことばの少ない子どもだった
幼い頃から空を見上げてばかりで
地上のことなど大して気にしていない
大人は可愛がったが
同じ年頃の子などは不思議がった

小学生になると
鳥居をくぐりに神社へ出掛けていた
出入口なのだと教えてくれた
この世からあの世へのなのかときくと
今から過去か未来へなのだと言った

にれは祠に奉られていた
石になっていた体を保つため
こころを石にしなければならなかったのだ
と大人たちにはるは伝えた

後ろ姿は悲しいが愛
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