スタンド・バイ・ミーの残像/捨我
 
ベトつく暑さで目が覚めた
いつの間にか梅雨は終わっていたらしい
カーテンを開けると太陽は午後を指していた
たまには散歩でもするか
わけもなくそう思った

ひりつく程の真夏日に馬鹿な思いつきを後悔
重いサンダルを引きずり避難先はコンビニ
50円のアイスバーで僕はどこへ行けるだろう

影から影へ渡り歩き神社の裏通りをゆく
この道を抜けると鬱蒼とした線路がある
線路沿いを歩くごとに人通りは減って
防空壕のようなトンネルの前で僕は足を止めた
涼むのにはちょうどいいな

線路の上に寝そべってみる
寝心地悪くて少し冷たい
死ぬ時の温度ってこんなもんなのかね
なんて考えて苦笑い
どうせ廃線だ
そんなこと知ってたのに

どれだけ遠くに行ったっていつかは帰るしかないことに
どれだけ離れてみたところで帰る場所はひとつだってことに
安堵と言う名の絶望を見た
あの日の家出を思い出していた

はずれのアイスバーに親近感を覚える
そんな帰り道
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