朝の電車/葉leaf
朝の電車は何かを探している
遠くにある理想的なものを探すのではなく
近くにあるけど
いつもの通路にあるけど
まだ発掘されていないもの
新しく降り注いで来るものを探している
朝の電車は何かを試している
誰も考えたことのない突飛なことを試すのではなく
どんな電車でもやる当たり前のことに
毎回新しい意味を見出しては
電車という概念の体系を組み替え
新しい電車の概念がうまく走れるかどうか試している
朝の電車は何かを残していく
とりわけ重要で価値のあるものを残すのではなく
ただ揺れと風景と憩いとを提供することで
乗客に微かで消えゆく記憶を差し込み
遠くへ旅立って行こうとする乗客をいつか急襲する
故郷の車窓の郷愁に満ちた風景を
乗客のまっすぐな本能に残していく
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