草履の女性…〜その瞳をみていたら〜より/黒木アン
招かれた小さな部屋で
積み上げられた草履に
何もなかったように
淡々と話す貴女
励まされたのが
私であることに
なんとも情けなく
なんとも嬉しくもあり
紡いだ貴女の指も
筆を持つ私の指も
いつか襷(たすき)を
かける手になるのを
知ってか
裸で受け取った草履を
桜色の風呂敷で
包みたかったのは
その薄霞の頃に
また こうして
青い浴衣が干された
軒の下で
交わしたかったからで
迎える短日の日々に
どうか
極寒の夜がないことを
願っています
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