結晶/葉leaf
線香をあげるとき
仏壇に飾られたあなたの遺影の中で
あなたは結晶化していた
あなたは若いままでもう歳をとらない
あなたはいかなる光も言葉も感情も透過する
温かく透明な結晶だ
あなたの作品の数だけ
あなたの結晶は作られた
どんな批評も解釈も砕くことのできない
それでいてどんな批評も解釈も虹色に変える
季節の巡りの証のような結晶
あなたの結晶は静かに鳴り響いている
遠くにある存在とも遥かな距離を経て共鳴する
存在することは共鳴することであり
あなたは常に無限の他者と交流している
私の中にもひとつ
あなたの結晶がある
私を映し出し私に問いかけるあなたの結晶
これから歳をとっていくにあたって
様々な側面を見せ様々な問いを発してくれるだろう
私が変化していく過程で
あなたの結晶の全てを明らかにすることはできない
あなたが謎のままであり続ける角度を前にして
あなたの取り返しのつかない不在に
せめて言葉だけでも捧げていいだろうか
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