春の騒乱/這 いずる
 
春風の寒さに打ち負かされ
春物を脱ぎ捨て冬着を着込んだ
清涼な陽射しに
静寂で満たされていた部屋はかき乱され
命の騒乱が飲みこんでゆく

呼び声のホイッスルが吹き鳴らされ
水はわき出し
空は鳥でさんざめき
地は蠢く虫で満ちた
菌(きのこ)は木の葉を持ち上げて
兎が身を震わせて産まれる

その春はもう来ていて
私の春はまだ来ない
命の春はもう来ていて
私の春はまだ来ない
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