私に満足感がない/星野つばき
 
私にゃ小さな夢も無い
おとう(父)は、昭和の春の夜
サナトリウムから旅立った
おかあ(母)は、平成の認知症
旅立つことさえ忘れてる
田舎の家は朽ちはてて
今じゃ住む人誰も無く
私にゃたいした過去も無い

私にゃ少しの金も無い
ちょっと小粋なスタイルで
君と一緒に歩いてみたい
幾らセッセと働いたとて
食費と家賃を払ったら
残っているのは小銭だけ
やっと買えたオシャレ着も
ズングリムックリのこの体
私に似合う服も無い

私にゃ満足感が無い
絶え間なく出る泡のように
溢れ出て来る欲望は
枯れることなく湧き続け
束の間の満足さえも
感じない

世の中にゃ
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