群像/飯沼ふるい
 
貼られています。
そこに向かって深緑のジープが突っ込んで来たのは、語尾をずるずる引き延ばすような訛りを隠そうともしない男が女と別れてから中央線での人身事故に捕まり立ち往生していた時でした。
衝撃はよほど大きかったと見え、その破壊力は二度目の元寇の際、いざ浜に上陸せんとして蒙古兵が投げた、てつはうにまでおよび、肥前武士の右腕をちぎり飛ばしたものです。
彼の流した血とよく分からない体液は、海砂と化合してひとつの小さなストロマトライトになりました。
それは今も尚、死んだ観念のような姿で酸素を吐き続けています。





冬の陽のおおらかな無情
 行方は知らない

白い雪の静か
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