鯨はみどり色の夢をみていた/yo-yo
 
それは鯨ではない
おたまじゃくしだ
スケッチをするぼくの背後で
だれかの声がした

骨になって眠りつづける
博物館の鯨
宙に繋ぎとめられたまま
白い夢はなかなか
目覚めることができない

潮によごれた丸い窓を
ぼくはみず色で塗りつぶした
骨の鯨は
ひとつの窓から空をみ
もうひとつの窓から海をみていた

ぼくは夢の窓から
大きな鯨を探しつづけた
小さな鯨はどこまでも追いつけない
みどり色の
ながいながい夢だった

風に泳ぐ草がみえる
白いキャンバスのなかで
鯨の夢の
目覚めるときを待っていた





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