冷えていく鉄/即興ゴルコンダ(仮)投稿.17/こうだたけみ
カンカン照りの夏の日に
黒いペンキが捲れてた
露出した鉄の赤錆を
ぼんやり見つめる
ころがり落ちた
階段の下から
目覚ましが
遠く鳴る
リリリ
リン
リ
すでに
取り返しが
つかないほどに
完璧な寝坊をした朝
一つ飛ばしで駆け上がる
プラットフォームまでの階段
血糖値の急降下
遠くなる
意識
口に押し込むチョコレート
ドアに押し込んだカラダ
深呼吸をくりかえして
吸って吐いて吸って
吐いた息で曇る窓
三月、春が来る
三つになる前の
初めての記憶
黒い階段に
置いた掌
温かい
鉄の
錆
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