あいつは復讐したがっている/オダカズヒコ
どのみち世界は
俺を受けいれることはないだろうと思っていた
二十歳のころ
俺は生まれてきたことを呪った
憎しみは
親に向けられた
憎しみは
世間へと向けられた
憎しみとは殺意だ
殺せ!と
俺の中の意志は俺に命令した
何を手はじめに殺せばよい?
母親の胸ぐらを掴んだ
母親の背後に
青い海が見えた
父親の胸ぐら掴んだ
父親の背後には
黒い雲が見えた
死は簡単だ
あっという間に心臓の中を通り抜け
世界を粉々に破壊してしまう
世界は俺が思うほど
雄大でも無限でもなく
みすぼらしく
弱々しく存在している
いや
ひょっとすると
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